社会の真実の見つけかた (岩波ジュニア新書)

社会の真実の見つけかた (岩波ジュニア新書)の詳細

前半の１，２章は、堤氏が一貫して訴えてきた、アメリカの政治的問題を告発する内容である。堤氏の本を読んできた人にとっては、それほど目新しい事が書いてあるわけではない。ただし、２０１０年くらいまでの近況がアップデートされているし、岩波ジュニア新書という事で判りやすく要約されている。『ルポ・貧困大国アメリカ』の頃より絶望感が増しているように思えるが。後半の３，４章についてはタイトルの『社会真実の見つけ方』についてのヒントが書かれている。答えでなくヒントであるのは、真実は他人から与えられた時点で、既に疑うべき要素を含んでいる可能性があるからである。堤氏が、あくまでヒントとして提示した意味でも、良識ある見識から書かれているとは言える。今までの堤氏の著書を読むと、“どうして日本人ジャーナリストが日本向けの本でアメリカの問題を告発するのか？”という疑問が少し残った。高得点を付けているレビューを読むと、対岸の火事を『怖いね、怖いね』と言っているような無邪気さが伺える事からも、読者が自分に通じる問題として読んでいない事が判る。それが、この本では、日本にも通じる問題点にも少し踏み込んでいるのが進歩だろうか。アメリカの問題を、日本人が他人事でないと思えるようにならなければ、日本人は本気でアメリカの国内問題に目を向けたりしないだろう。まあ、とにかく、３，４章は堤氏の本を多く読んできた読者にも新しい示唆があると思う。