科学者点描電子ブックのダウンロード
科学者点描
によって 岡部 昭彦
科学者点描の詳細
本のタイトル : 科学者点描
作者 : 岡部 昭彦
ISBN-10 : 4622039338
発売日 : 1989/10
カテゴリ : 本
ファイル名 : 科学者点描.pdf
以下は、科学者点描に関する最も有用なレビューの一部です。 この本を購入する/読むことを決定する前にこれを検討することができます。
つい最近この本の著者岡部さんの訃報および偲ぶ会の記事を偶然に目にしてオマージュ(?)のつもりで購入しました。私同様、あの時代に雑誌「自然」の影響を受けて科学者を志した人は多いはずで、その意味ではもっとはるかに世の中に名を知られてよい人であったと思います。残念なのは、これだけ傑出したジャーナリストがいながらにして、日本には本当の意味での科学ジャーナリズムが育たなかった点で、この原因はむしろ日本の大学の特殊性にあるといっていいような気もします。日本がこれからも損をし続けて行く原因になって行くのではないでしょうか。本書にはそれを避けるためのいくつかのヒントが隠されているように思わせる何かがあります。たとえば今の世を騒がす論文データねつ造の問題の根底にかかわる現象も、本書中でのライフサイエンスに関わる著者の意見、「相も変わらず、研究者の関心は没歴史の現在のみにあるようだ」が何をかいわんやです。事実、「ジャーナルのインパクトファクターを気にする現代の風潮を聞いたら坂上は嗤い飛ばすに違いない」なる文章をweb上で探すことのできるほどの、すなわち大学の紀要に黙々と論文を発表していてもその独創的研究は自然と世界に認められるものになったという昆虫社会学の泰斗、坂上昭一の名を私はこの本で初めて知り得ました。ライフサイエンスに関わる雑文は本書後半のⅡ部に二か所見られますが、後のほうでの著者の心配は時代の趨勢からか生命倫理的な面にだけ向けられているようで、この点は少し残念ですが流行に不安を感じた著者の直観にはたぶん確かなものがあったのでしょう。理科系の好きな文科系のひとも、歴史や国語が好きな理系人も、かつて岡部さんが編集人として腕をふるった「自然」のような硬派の雑誌の再出現を首を長くして待つ気にさせてくれるような、年代を経れば経るほどに味わいが増してくる好著ではないかと思います。
0コメント