9条の挑戦:非軍事中立戦略のリアリズム

9条の挑戦:非軍事中立戦略のリアリズムの詳細

この本は広範な事実や論理を展開し、非軍事的な方法や平和的な外交で国を守ることを説いている。その論理には一定の説得力がある。しかし根本的な欠点は、著者には一般の国民の疑問に答えるという姿勢が欠落していることだ。その疑問とは「日本が非武装でいるときに、敵が局地的な侵攻をしてきたらどうする？」だ。あくまで局地的な衝突である。著者は、敵国が最初から日本本土に大々的に侵攻して来た場合について、それに対して軍事力で対抗するのは犠牲が大き過ぎるから、非武装で降伏する方がいいと説く。しかし、一般の国民はそのように突如全面戦争が起きるとは考えていない。あくまで局地的な侵攻、例えば中国が尖閣を占領しに来たらどうするのだと考える。この疑問に対して著者が正面からひと言も言及していないのは、自衛隊を否定する著者自身が答えに窮しているからだろう。著者の主張に従えば今すぐにでも自衛隊を解散した方がいいことになるが、不思議なことにそのようには主張していない。つまり自衛隊の存在意義を暗黙のうちに（一定程度は）認めているとしか考えられない。これは本著の明示的な論理とは深刻に矛盾している。だから星二つ。